It Was Written/NaS


It was written『illmatic』から聴かないNaSのススメ

NaSというとハーコーの中のハーコーというイメージがあると思う。確かに名盤と謳われる1st『Illmatic』はハーコーの極みだし、やたらに見た目が怖いことも否めない。特にヒプホプ好きでなければまず手は出さないだろう。
だけど、だからといってスルーするにはあまりにも魅力的なのがNaSというラッパーで、避けるどころか真っ先に聴いてもらってもいいと思うぐらいだ。

そこでオススメしたいのがこの2ndアルバム。
実ははっきりいって評判は悪い。周りにいかにもなヒップホッパーがいたら試しに訊いてみるとわかると思うけど、あまりにも1stが偉大すぎたということをベースにして、この2枚目は売れ線に走った駄作という評価がある。
amazonでもいい。上の画像からいけるのでのぞいてみて欲しい。★が酷いことになっている。
ここでふーんと思う前にちょっと考えてみて欲しいのだけど、ハーコーなひとにはポップな売れ線狙いといわれ、そうでないひとにはハーコーだからと敬遠される。なにかもったいないお化けの出そうなことが起きていないだろうか。起きている。

もちろん代表作ではないし、隠れた必聴の名盤だともいわない。だけどヒプホプに興味がある、ってことは多分ラジオでも映画でも何かカッコいいイメージを持ったひとだと思うけど、そのひとが求めている音は実はコレなんじゃないかとは言える。
amazonは試聴ができるので、まずは2曲目を聴いてみて欲しい。このトラックには聞き覚えがあると思う。宇多田ヒカルも”Never Let Go”で使っている、というか世間一般では映画『LEON』で有名なSTINGの名曲だ。こういうポップソングのトラックにラップを乗せるおもしろさはヒプホプの醍醐味のひとつだけど、ここまでの大ネタはそうそうお目にかかれるものじゃない。NaSはイメージのハーコーさに反して、サンプル元がベッタベタだったりポップだったりする傾向が強いのだ。
次に14曲目。Lauryn Hillをゲストに迎えたこれは誰がなんと言おうと名曲で、輸入盤の値段ならこれだけのために買ってもいいと思うぐらいだ。あまり若い人でなければどこかで一回ぐらい聴いたことがあってもおかしくない。かなり流行ったはず。このポップさがハーコーのひとは気にくわなかったのかもしれないけど、そういうイメージの問題で良い曲を貶めてしまうのは、どんなジャンルでもあることだけど非常にもったいない、というかくだらない。
そしてこれははっきりさせておきたいのだけど、サマソニ'04で来日したとき、みんなこの曲ノリノリだったよね?大好きだよね?なのに未だにこの2ndの評価が低いのは憂うべきことだ。

ということでとっかかりとして大いにオススメするこの2ndだけど、上述の通り最高傑作などではない。 ハーコーに対する免疫ができたなら、聴いて欲しいアルバムはまだある。ここから先は特にということはないけど、1st『Illmatic』はまだやめておこう。あれは確かに名盤だけど、取っつきやすさの欠片もない。だからその前にワンステップを。とりあえずここでは『God's Son』を挙げておく。やっぱりハーコーはダメだったとなっても”エリーゼのために”をそのまんまバックにするというなんともアレな”I can”が慰めになってくれるはず。でなければ『I AM』も多分大丈夫。
それでもめげずに、立派にハーコー免疫のできたひとは、今度は必ず『Illmatic』を。確かに名盤なので免疫ができていれば一生はまれるはず。

暴言吐かせてもらうと、評論家気取り(僕もそのひとりか)や、ハーコーワナビーのクソガキがイルマティックイルマティックうるさいんだよ。新しいNaSだって断然クールなんだ。スノビズムのために現役の評価を貶めたり、興味を持ったひとを撃退するような真似は止めてくれ。あんな重いもの今までヒプホプ聴いてこなかったひとにいきなり薦めたら普通引くだろ。わかれよ。

(KOM:04/11/01)

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